我々が目指すべき方向は・・・
スタートアップの成長に不可欠な企業との協業が極小
スタートアップの目的、使命は、新しい発想や社会的な需要、 あるいは新しい技術や製品を事業(ビジネス)化し社会に届けることであり、 この観点から、既存企業の有する事業ノウハウやシステム、リソースを活用することは、 特に事業人材の流動性が低く、事業資源が企業に集中している我が国にとって重要であるが、 その連携は欧米に比して大きく遅れている。
例えば、政府の調査員の報告によれば、企業のオープンイノベーションパートナーとしての起業家やスタートアップ企業の割合が欧米に比して極小であり、 企業からスタートアップへの投資額も、またM&Aの件数も主要国に比して極めて少なくなっている。
こうした背景の下、わが国のスタートアップにおいては、研究・開発から製造・販売等における多様なビジネス領域において、 多様な関係先との協業(アライアンス)を希望しているが、 そうした スタートアップサイドの希望と、現実の協業(アライアンス)におけるギャップは、 すべてのビジネス領域において、国内的には(海外企業に対するものを除き)、 大手企業に対するギャップが一番大きくなっている。
起業家(スタートアップ)と大手企業の協業促進に向けた
カタライザーの役割
協業を促進する仕組みの必要性
我が国は、かつては、企業内部において、旺盛な製品開発意欲の下、イノベーションを醸成し、世界経済をリードするところまで発展してきたが、 21世紀に入り、企業・ビジネスを取り巻く環境が大きく変化する中、民間の基礎的研究開発に対する取り組みの低下、 働き方改革、組織の硬直化や欧米の会計ルールの適用等の多様な要因とあいまって、企業の内的取組による新事業の開発や革新的ビジネスの展開は難しくなってきており、 国際競争力の分野別評価においてもビジネスの効率性が最も低く、その中でも、前述のとおり経営プラクティスについては、 64か国中62位と最低の水準とされる等、スタートアップを活用してイノベーションを進めていこうとする国際的動きから大きく取り残されている。
一方、スタートアップ企業において成功した事例を見ていくと、 多くの場合、関係する大手企業との協業が契機となって事業計画の修正や方向転換(ピボット)がなされることで、 事業化が大きく加速、展開しており、顧客側ないし開発・供給側の大手企業をも巻き込んだ形で、 協業をどう進めていくかが極めて重要であることが伺われる。
また、人的資源に限界があるスタートアップの営業・マーケティングや、コーポレート部門の実務ニーズ等について、大手企業サイドの有する優れた実務能力によって補完することができれば、その成長を加速・促進することができるし、大手企業サイドにおいては、ベンチャーリテラシーの向上を図りつつ、スタートアップの活力を取り込むことで、事業面でのシナジーのみならず、新たな事業を試行し、稼ぐモチベーションや稼ぐ力を蓄えていくことを通じて、自らの事業イノベーションを促進していくという、内的なイノベ ーションへの取り組みを加速することも期待される。 しかし、残念ながら、我が国企業において、スタートアップとの協業により成果をあげている事例は多くない。
このように、企業と起業家・スタートアップとの協業は、双方にとって、 さらには我が国経済・社会の変革や国民生活・福祉の向上に、 大きな意義を有するものであることは論を待たない。
我が国の先進的な研究開発成果や、斬新な事業アイデアをビジネスとして確立し、国民に届け、 世界に届けるためには、スタートアップと企業との協業等を通じた 国を挙げた果敢なチャレンジが必要である。こうしたエコシステムの整備や活用が進まないと、 自国の成果やアイデアさえ自ら発信できない国として、世界からの信頼を損ね、 わが国経済に対する大きな悪影響をもたらすことは避けられない。
近年、こうしたスタートアップと既存企業との協業の重要性は指摘されつつあるものの、多くの大手企業の経営者や経営層においては、事業の継続を主要な任務とする組織内で、多様なリスク管理が求められることへの反作用として、スタートアップとの協業に慎重であり、その推進には、いわゆるカタライザー(世話役)や触媒となる調整役が必要である。 このカタライザーは、単なる企業とスタートアップのマッチングだけでなく、今後のマーケット環境を踏まえ、わが国全体のイノベーションをにらんで、共に考え、行動する役割を担うものである。
- 豊富な知見・経験を有する関係者や関係機関との強固なネットワークと、
- 常に社会への貢献を信条とし、不断に挑戦している元気な若手経営者や先駆的な企業(群)等の、
我々の貴重な財産でもあり、また社会変革に挑戦する強力な武器でもある、長年にわたり滋養してきている、
積極的・献身的協力を得て、たとえ規模は小さくても、数は少なくても、他の企業を刺激し、社会全体の行動変容のロールモデルとなる、先進的協業の取り組みにチャレンジする価値は大きいと考える。
⑶我々が目指すべき方向は・・・
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