国民を取り巻く厳しい現実
いったい、何が起こっているのか?
トンネルから抜け出せない日本経済
わが国GDP(名目)は、1990年に世界の14.1%を占め、世界第2位であったのに対し、2022年は、4.2%と大幅に低下し、その順位も中国に抜かれ世界第3位となっている。
さらに、IMFの最新予測によれば、2023年には人口が約3分の2のドイツに抜かれ、世界第4位となる公算が高いとされ、長期的な低下の傾向から抜け出せないでいる。
(ドイツ4.4兆ドル 日本4.2兆ドル)(2023年10月2日現在)
1990年代前後には世界第2位まで上昇していたわが国の1人当たりGDP(名目)は、2022年には、1980年以来最低の世界で32位(338ドル)にまで低下し、イタリアにも抜かれG7では最下位に、またアジアでは4位にまで低下しており(カタール、UAEを入れると6位)、シンガポールの4割程度でしかない。
さらに、2023年には、為替の状況にもよるが、台湾や韓国に抜かれてもおかしくない、低下傾向に歯止めがかからない低位な状況となっている。
陰りが見える日本企業(経営)の影響力
わが国企業の時価総額でみると、1989年(平成元年)には、世界の時価総額ランキングの上位50社に、30社近くランキングされていたものの、2023年2月において、50位以内に日本企業はなく、日本でトップのトヨタでさえ、52位(1989年11位)となっており、我が国企業(経営)の国際社会における影響力や評価が大幅に低下している。
ちなみに、2020年に、GAFAMといわれるアメリカの新興企業5社の時価総額合計が、日本の全上場企業の時価総額合計を上回り、2023年12月時点では、1,280兆円と、日本の東証上場企業の時価総額合計865兆円を遥かに上回っており、日本企業(経営)に対する成長性や国際的影響力に対する評価の低さが伺われる。
また、各国の競争力を評価、比較したIMD世界競争力ランキングにおいて、1990年代前半には常に上位にランクされていた我が国の競争力は、1990年代後半以降低下を続け、2023年には過去最低の35位まで低下し、アジア太平洋地域においては11位(14か国中)と、日本より下位は、インド、フィリピン、モンゴルだけとなっている。
当該評価の基礎となっている経済、政府、インフラ、ビジネス効率性の4分類別では、ビジネス効率性が最も低く評価され、その中でも、経営プラクティスが64か国中62位と最低の水準とされ、我が国の企業経営に対する評価の低さが、我が国の国際競争力に大きな負の影響を与えていることを示している。
減少し続ける国民の資産
こうした日本経済の企業活力・経営力の停滞や国際的地位の低下について、単なる経済指標の一つとしてではなく、国民生活に及ぼす影響について考察してみる。
まず、主要国の平均賃金(年収)の推移を比較してみると、この約30年間、米、英、独等、欧米の主要国はもちろんの事、OECDの平均レベルにおいても、1.3~1.5倍と、着実に増加しているが、我が国では横ばいで推移しており、所得水準の実質的低下傾向が顕著となっている。 https://www.asahi.com/articles/ASPBM54P1PBCULFA023.html?iref=pc_photo_gallery_bottom
また、国民資産の重要な運用先の一つである株価について、この30年来の日米の推移を比較すれば、米国の平均株価は4倍以上の水準になっているにも関わらず、我が国の日経平均株価は、令和に入り強力な金融緩和策の効果が出てくるまでは横ばいとなっており、国民資産の相対的な低下は避けられない状況となっている。
長期金利については、各国と比較するまでもなく、極めて低位で推移しており、国民の預貯金の金利水準も極めて低く、運用益を望めない状況が長く続いている。 https://www.globalnote.jp/post-10586.html
さらには、わが国が、金融緩和を続ける中、国際的な金利上昇により、近年の為替水準の低下も顕著であり、貿易量や物価水準を基に算出された通貨の購買力を測る総合的な指標である実質実効為替レートの推移をみると、現在では、円が変動相場制に移行した50年前より低い最低の水準にあり、国民が気付かないうちに、その相対的な生活水準が時代に逆行するほど低下していることを示している。
ゴールドマンサックスのレポートによれば、このままの状況で推移すれば、2075年の我が国のGDPは、ナイジェリア、パキスタン、エジプトを下回るという試算もあり、政府としての取組が急務であることは間違いないが、それ以上に、社会・企業・国民が、こうした危機感を共有し、総力を挙げて取り組んでいける体制を構築することがより重要である。
⑴国民を取り巻く厳しい現実
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